大人しく待つコトもできないのか?
そんなふうに思われるのが嫌で、今までじっと待っていた。
だがそれも、限界だ。
「美鶴がここに戻ってくるとしたって、いつ戻ってくんのかわかんねぇ。戻ってくるかどうかも、わからないワケだろ?」
尋ねられたワケでもないのに説明する。だって、その二つの円らな瞳に無言で見上げられると、どうしようもなく居心地が悪い。
「だったら、確実に会える場所で待った方がいい」
「だから、ココよりも自宅の前で待つ?」
「間違ってねぇだろ?」
憮然と腕を組み、文句あるかと睨みつける。
行ってみる? なんてフッてきたのはそっちだろ?
そんな、焦りと苛立ちを必死に隠した相手の視線に、瑠駆真がゆっくりと立ち上がった。
「間違っちゃいないよ」
「じゃあ、そんな目で見るな」
「どんな目?」
「そのっ!」
その意味ありげな、何か言いたそうな、どことなく見下したような目で俺を見るなっ!
わかっているさ。
物事に対する判断力と分析力。そのどちらも敵わないと、わかってはいる。
俺はコイツと違ってすぐにカッと頭に血はのぼるし、あれこれ頭ん中で考えるのも苦手。
今だって、まるで捻くった数学の問題解いてるみたいで、座ってるだけなのに頭がポーッとしてきてる。きっと暑さのせいだけじゃない。
わかってる。俺よりもコイツの方がずっとイイ男だし、ただ無骨なだけの俺よりも、コイツの方が頼りがいはある。
学校では俺のコト気に入ってくれてる女子もいるけど、きっと標準で考えたらコイツの方が上なんだ。
わかってるんだ。
でも、わかってはいても、認めたくはない。
認めたら負けなんだ。
一方、一見寡黙にただ美鶴の登場を待ち続けているかのような瑠駆真も、実は心中穏やかではない。
美鶴? 僕たちを… 僕を避けているの?
瞳を閉じ、必死に想う。
逢いたい。
薄っすらと見開く。
「自宅で待つのは、間違ってはいないさ。でもその前に、一つ寄っておかないか?」
「どこへ?」
自宅前待機という聡の提案よりも、さらに上をいく最善策を披露しようというワケか。
ちっ 気に入らねーな
「どこだよ?」
待ち続けた疲労も相俟って、聡の苛立ちはさらに増す。
そんな相手の心情を逆撫でしたくはないのだが―――
「富丘」
その一言に剣呑な反応を示す聡。瑠駆真は思わず苦笑する。
まぁ 気持ちはわからないでもない。瑠駆真もあの青年には、良い印象は持っていない。
キザだと聡が表現するのには、実は結構同意見だ。
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